ガラス転移点や、ガラス転移温度。
プロダクトデザインの中でも樹脂製品に携わる方にとっては、よく耳にする言葉ですよね?
なんとなく理解している方も多いと思いますが、そもそもガラスとはどういう状態か理解できているでしょうか?
個体とガラスの違いをしっかり認識していますか?
ドキッとした方も大丈夫です。
この記事を読めば、ガラスとは何かをしっかり理解できます。
では、学んでいきましょう。
ガラス転移点・ガラス転移温度とは?
液状やゴム状の物質が、ガラスになる温度のことを「ガラス転移点・ガラス転移温度」とよばれています。
*ガラス転移点とガラス転移温度は、一般的にどちらも同じ意味で使われます。
また、ガラス転移点は(Tg)という表記でも表されます。
Tgとは「Glass transition temperature」を略した表記です。
同じような言葉で、融点(Tm)があります。
Tmとは「Melt transition temperature」を略した表記です。
ガラス転移点と融点の違いについては、後ほどくわしく解説していきますね。
液状・ゴム状・ガラス状・結晶状(個体) 樹脂に存在する4つの状態
樹脂は温度帯によって、(液状・ゴム状・ガラス状・結晶状)4つの状態が存在します。
樹脂の最も特徴的な点は、ゴム状態が存在すること。
ゴム状態というのは、液状とガラス状の中間地点にある軟質状態の事をさしています。
ゴム状態から更に冷却すると、ガラス状態へと変化します。
さらに、結晶性樹脂の場合は冷却の過程で結晶化が起こり、最終的には結晶状とガラス状が混ざりあった状態になるのです。
つまり、結晶構造を持たない非晶性樹脂の場合は、冷却し固まった状態が「ガラス状態」であると言うことです。
液体でも個体でもない? ガラス状態って何?
一般的にガラスと言うと、窓やビンに使われているガラスを思い浮かべると思います。
どちらも液体ではなく、硬い状態ですよね?
簡単に言うと、この状態がガラスです。
ただし、大きな落とし穴があります。
「硬い物質」=「ガラス」ではありません。
硬い物質の状態は、「ガラス」と「個体」に分類されるのです。
外見だけでは、ガラスと個体の見分けは付きません。
では、ガラスと個体は何が違うのでしょうか?
ガラス転移点と融点の違いも交えながら、誰にでもわかりやすいように解説していきますね。
ガラスと個体の違いとは
簡単に言うと、ガラスは分子が結晶化せず極限に固くなった(動きが凍結された状態)のことを言います。
実は、個体とは「結晶性の物質」を指す言葉なのです。
*日常生活では液体や気体ではない物質の状態を個体と呼びますが、ここではしっかりと区別して認識しておく必要があります。
では、ガラスとは一体なにものなのでしょう。
ガラスは液体であると聞いた記憶がありませんか?
物理学の世界では、ガラスは分子が結晶化していない状態なので、個体ではなく液体に近い存在であると言われています。
つまり、ガラスとは「非晶性の硬い物質」を指しているのです。
結晶構造がなく、硬い物質をガラス状態といいます。
ガラス転移点と融点のちがい
ガラス転移点と融点は大きな違いがあります。
勘のいいあなたはもう気づいていますね?
ガラス転移点=「物質がガラス状態になる温度」
融点=「個体が液体になる温度」
これが、ガラス転移点と融点の違いです。
つまり、非晶性樹脂には融点が存在しません。
結晶構造がない=「個体にならない」ので当然ですよね?
ガラス転移点は、「物質がガラス状態になる温度」
融点は、「個体が液体になる温度」
非晶性樹脂には、結晶構造がないから融点が存在しないということです。
結晶性樹脂と非晶性樹脂のガラス転移点のちがい
結晶性樹脂はガラス転移点をこえるとゴム状態になり、更に温度上昇することで結晶が溶解する融点達すると液状となります。
非晶性樹脂は結晶部分が無いため、変化点はガラス転移点のみとなります。
ガラス転移点を持つ代表的な物質
- 合成樹脂
- 天然ゴム
- ケイ酸塩ガラス
ガラス転移点・ガラス転移温度についてのおさらい
いかがでしたか?
ガラス転移点だけでなく、ガラスとはそもそもどういった状態なのかよく理解できましたね。
最後にもう一度、大事な点をおさらいしておきましょう。
ガラス転移点とは
・液状やゴム状の物質が、ガラス状態になる温度。
融点とは
・個体が液体になる温度。
ガラスとは
・非晶性の硬い物質。(分子が結晶化せず極限に固くなった状態。)
外見は同じように見えるものでも、ガラス状態と結晶状態が存在するんですね。
物質って本当に奥が深くて不思議です。
ガラス転移点はプロダクトデザインとの直接的な関係性は薄いですが、物質の特性を応用したデザインや成形条件を検討する際にとても役立ちます。
ぜひ知識として備え、プロダクトデザインの幅を広げてくださいね。
これからも、プラスチックの特性をどんどん学んでいきましょう!