ステンレスには様々な種類があることをご存知でしょうか?
刃物、食器、配管、ネジ、筐体などなど・・・、私達の身の回りには、多くのステンレス製品が存在します。
ステンレス鋼は、プロダクトデザイン・製品設計でも使う機械が非常に多い金属です。
「そもそも、ステンレス鋼って何?」
「種類が多くて違いがわからない。」
あなたの疑問に答えるために基礎的なステンレス鋼の分類から、それぞれの特徴を分かりやすく解説します。
それでは、ステンレスについてやさしく学んでいきましょう。
ステンレス鋼の種類
そもそもステンレス鋼とは、全体の12%以上クロムを含んだ鋼を指している言葉です。
日常生活では、ステンレスの違いを意識する機会はほとんどありません。
ステンレスには大きく分けて2種類(Fe-Cr系、Fe-Cr-Ni系)があります。
Fe-Cr系は(マルテンサイト系、フェライト系)に分類され、Fe-Cr-Ni系は(オーステナイト系、オーステナイト・フェライト二相系、析出硬化系)に分類することが出来ます。
プロダクトデザイン、製品設計をする上では性質を理解し、適切に使い分けることが必要です。
化学成分 | 金属組織 | 代表的な種類 |
---|---|---|
Fe-Cr系 | マルテンサイト系 | SUS410,420,403,440 |
フェライト系 | SUS430,405 | |
Fe-Cr-Ni系 | オーステナイト系 | SUS304,301,302,303,316 |
オーステナイト・フェライト二相系 | SUS329J1 | |
析出硬化系 | SUS630,631 |
Fe-Cr系
Fe-Cr系は、鉄+クロムが含まれているステンレス鋼です。
マルテンサイト系とフェライト系の2種類に分類できます。
マルテンサイト系
マルテンサイト系のステンレスは、焼入れによって硬化する特性を持っています。
SUS420(13Cr)は、刃物や外科用の器具などに使われることの多いステンレスです。
最高硬度のSUS440系(18Cr)では、ベアリングや軸受に使用されることが多い。
フェライト系
フェライト系のステンレスは、焼入れで硬化しない性質を持っています。
ステンレスの中では応力腐食割れが発生しにくく、ニッケル(Ni)を含有していないことから安価で幅広い用途に使用されます。
16%以上のクロムを含有しているため、マルテンサイト系のステンレスと比較して耐熱、耐食性が良く、オーステナイト系ステンレスよりも加工しやすい特徴があります。
Fe-Cr-Ni系
Fe-Cr-Ni系は、鉄+クロム+ニッケルが含まれているステンレス鋼です。
オーステナイト系、オーステナイト・フェライト二相系、析出硬化系の3種類に分類できます。
オーステナイト系
オーステナイト系のステンレスは強度、耐食性、耐熱性、延性、靭性に優れたステンレスです。
曲げ加工や深絞りなど、冷間加工性が良好で溶接性が良好な為、非常に幅広い用途で使われており、生産量が最も多いステンレスと言えます。
また、ステンレスの中で唯一磁石につかない性質をもっています。
反面、応力腐食割れが起こりやすいと言われており注意が必要ですが、添加物で改良されているグレードもあります。
オーステナイト・フェライト二相系
オーステナイト・フェライト二相系は、オーステナイト系やフェライト系のステンレスよりも強度があり、耐食性に優れた性質を持っています。
その上、耐海水性や耐応力腐食割れ性にすぐれており、化学プラント用の装置に用いられる事が多いステンレスです。
析出硬化系
析出硬化系のステンレスとは、オーステナイト系ステンレスを熱処理(析出硬化処理)によって、非常に高硬度な性質をひきだしたステンレスです。
ボルト、シャフト、高強度なピンに使用されることが多い。
SUS303、SUS304、SUS316の違い
化学成分 | 金属組織 | 代表的な種類 |
---|---|---|
Fe-Cr系 | マルテンサイト系 | SUS410,420,403,440 |
フェライト系 | SUS430,405 | |
Fe-Cr-Ni系 | オーステナイト系 | SUS304,301,302,303,316 |
オーステナイト・フェライト二相系 | SUS329J1 | |
析出硬化系 | SUS630,631 |
プロダクトデザインや製品設計ではオーステナイト系のステンレスが使われることが多く、SUS304や303、316等どれを選べば良いのかわからない事があると思います。
ステンレスの中でも使われることの多いSUS304、303、316。
それぞれどのような違いがあるのか簡単に解説します。
SUS303
SUS303は、鉄にクロムを18%、ニッケルを8%、その他硫黄やリンを添加したステンレスです。
SUS304と比較して加工性がよく、特に切削加工のしやすさでは大きなメリットがあります。
反面、添加物の硫黄やリンの影響により溶接性が劣るデメリットがあるため、溶接加工の必要性に応じて選択する必要があります。
また、SUS304と比較して耐食性は劣ります。
SUS304
SUS304は、鉄にクロムを18%、ニッケルを8%添加したステンレスです。
耐食性に優れており、汎用性が高く、非常によく使われるステンレスと言えます。
SUS316
SUS316は、鉄にクロム18%、ニッケル12%、モリブデンを2.5%添加したステンレスのです。
モリブデンを添加したことにより、SUS304と比較して耐食性・耐薬品性が高くなります。
腐食リスクの高い製品に使われることが多い反面、コストは20%〜高くなる傾向にあります。
製品試験を繰り返し、SUS316の耐食性が想定される使用環境に対してオーバースペックだと判断できれば、コストメリットのあるSUS304を選定するのが一般的です。
ステンレス鋼の違いをおさらい
いかがでしたか?
一般的にステンレスは、オーステナイト系の中でも耐食性に優れ、汎用的なSUS304が使われることが多いです。
このページではSUS304の特徴をベースに、SUS303やSUS316との違いを解説していますが、製品に応じて適切なステンレス材料を選定することが重要です。
ステンレスは5種類ある
・マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、フェライト・オーステナイト二相系、析出硬化系
磁石がつかないステンレスはオーステナイト系
・加工方法によっては、磁石が反応することもある
ステンレスの特性を理解して材料選定する
・耐食性、加工性、コスト等、製品のスペックに見合った選定が重要。
特に採用実績のない製品では、決め打ちで材料選定してしまうのは危険です。
カタログ上のスペックを参考に材料候補を選定するのは重要ですが、カタログ上のスペックだけで材料決定してしまうのは危険です。
数種類の材料で製品試験を繰り返し、最適な材料選定と製品設計を実現してくださいね。