プラスチックは、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」に分けることができます。
どちらも見た目は同じプラスチックですが、「可塑化」時における特性が違います。
「可塑化」とは、プラスチックがやわらかくなって溶けた状態の事。
つまり、熱を加えてやわらかくなるプラスチックが「熱可塑性樹脂」。
熱を加えると固まるプラスチックが「熱硬化性樹脂」って事なんです。
では、それぞれの特徴をくわしく見ていきましょう。
熱可塑性樹脂とは
「熱可塑性樹脂」とは熱を加えることによって、柔らかくなるプラスチックの事です。
加熱することで、可塑性(やわらかくなって溶ける)が得られるから「熱可塑性樹脂」。
熱 + 可塑性 + 樹脂 = 熱可塑性樹脂
それぞれの言葉を分解して考えると、とても簡単ですね。
熱を加えるとやわらかくなるということは、反対に冷えると固まる性質があります。
この性質を利用して、熱可塑性樹脂は多くのプラスチック製品に使われています。
また、熱可塑性樹脂は一度硬化したあとでも、もういちど熱を加えることで何度も可塑性を示す特徴があります。
*熱を加える可塑時間が長くなるほど材料の分子量が低下し、物性低下が起こるので注意が必要です。
熱可塑性樹脂の成形方法
熱可塑性樹脂の成形方法は、大きく分けて3つの成形方法があります。
- 射出成形
- ブロー成形
- 押出成形
代表的な熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂には、多くの種類が存在します。
大きく分けて、5つのカテゴリー(汎用プラスチック・汎用エンジニアプラスチック・スーパーエンジニアプラスチック・熱可塑性エラストマー・その他)に分類することができます。
それぞれに分類される樹脂は以下のとおりです。
汎用プラスチック
- AS(アクリロニトリル スチレン)
- ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン)
- EVA(エチレン・酢酸ビニル)
- PE(ポリエチレン)
- PP(ポリプロピレン)
- PS(ポリスチレン)
- PMMA(アクリル)
- PVC(ポリ塩化ビニル)
- CA・CAB(セルロース系樹脂)
汎用エンジニアリングプラスチック
- PA(ポリアミド、ナイロン)
- PBT(ポリブチレンテレフタレート)
- PC(ポリカーボネート)
- PET(ポリエチレンテレフタレート)
- POM(ポリアセタール、ポリオキシメチレン)
- PPE(変性ポリフェニレンエーテル)
スパーエンジニアリングプラスチック
- PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)
- PPSU(ポリフェニルスルフォン)
- PPS(ポリフェニレンスルファイド)
- PES(ポリエーテルスルホン)
- PSU(ポリスルホン)
- PEI(ポリエーテルイミド)
- PAI(ポリアミドイミド)
- PAR(ポリアリレート)
- LCP(液晶ポリマー)
- TPX(ポリメチルペンテン)
熱硬化性樹脂とは
「熱硬化性樹脂」とは熱を加えることによって、(材料の化学変化により)固くなるプラスチックの事です。
加熱することで、硬化性(固まる性質)が得られるから「熱硬化性樹脂」。
熱 + 硬化性 + 樹脂 = 熱硬化性樹脂
それぞれの言葉を分解して考えると、とても簡単ですね。
熱を加えると固くなるのですが、冷えると溶けるわけではありません。
実は、熱硬化性樹脂は熱を加えた最初だけ少し柔らかくなり、可塑性が生まれます。
その後、継続して熱を加え続けることによって、材料自身が化学変化をおこし、硬化します。
熱硬化性樹脂は、一度硬化してしまうと二度と柔らかくなりません。
代表的な熱硬化性樹脂
- EP(エポキシ樹脂)
- UF(ユリア樹脂)
- MF(メラミン樹脂)
- PF(フェノール樹脂)
- PI(ポリイミド)
- PUR(ウレタン樹脂)
- UP(不飽和ポリエステル樹脂)
- PDAP(ジアリルフタレート樹脂)
- Si(シリコン樹脂)
- ALK(アルキド樹脂)
熱硬化性樹脂の成形方法
熱可塑性樹脂の成形方法は、大きく分けて6つの成形方法があります。
- 射出成形
- トランスファー成形
- 押出成形
- 直圧成形
- 注型成形(キャスト成形)
- 積層成形
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のちがいをおさらい
いかがでしたか?
最後にもう一度、おさらいしておきましょう。
「熱可塑性樹脂」=熱を加えると柔らかくなり、冷えると硬化するプラスチック。
*硬化後でも、熱を加えるとやわらかくなり、再度可塑性を示す。
「熱硬化性樹脂」=熱を加えると、材料の化学変化が起こり硬化するプラスチック。
*硬化後は二度とやわらかくならない。
これでもう完璧!
バッチリマスター出来ましたよね?
「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」、それぞれの特徴が十分理解できたと思います。
一見難しい言葉に思えますが、一度理解してしまえばとっても簡単。
「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」を適切に使い分ける事は、プロダクトデザイン・製品設計にとって非常に重要な要素です。
プラスチックの特性を知れば知るほど、プロダクトデザイン・製品設計の幅は広がります。
これからも、プラスチックの特性をどんどん学んでいきましょう!